株式会社NTTドコモ様
長年続いたExcel管理からの脱却。通信インフラの心臓部に工程可視化基盤を
~Salesforce・フレクトとの協業で「CD-BPM」を構築~


Introduction
株式会社NTTドコモ(以下、同社)のコアネットワークデザイン部は、9,300万人以上の顧客が利用する通信の根幹「コアネットワーク」の開発・構築・保守を一元的に担う部署です。年間1,300件、1工事あたり約60工程にも及ぶ膨大な工事を、長年Excelで管理してきましたが、情報の分断や属人化といった課題の解消に試行錯誤を重ねていました。
この課題に対し、同社はSalesforceを基盤とした工程可視化ツール「CD-BPM」を構築し、株式会社セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce社)とフレクトとともに、Excel管理からの脱却と業務プロセスの標準化に取り組んできました。プロジェクトの背景やポイントについて、コアネットワークデザイン部の笠井様・杉本様・熊木様にお話を伺いました。
インタビュー実施:2026年7月
お話を伺った方

株式会社N T Tドコモ
ネットワーク本部 コアネットワークデザイン部 コアデザイン推進担当
担当課長 笠井 正博様(写真中)
主査 杉本 拓朗様(写真右)
熊木 智大様(写真左)
プロジェクトの背景・課題について
コアネットワークデザイン部は、同社の通信の根幹となる「コアネットワーク」の開発・構築・保守を一元的に担う部署です。基地局が電波を通じて顧客と直接つながる最前線であるのに対し、コアネットワークはその通信を集約し、1台で数百万人規模の顧客の通信を処理する設備です。同社では、この設備の構築工事を年間1,300件以上、1工事あたり約60工程という規模で手掛けています。1つの工事には設計・設置・機器搭載・試験・既存ネットワークとの接続確認など複数の工程があり、完了までに3ヶ月から半年、長いものでは1年を超えることがあります。
こうした膨大な工事を、同社では長年にわたりExcelで管理してきました。しかし、その運用では日常的な支障が生じていました。何かを確認するたびに担当者へ問い合わせる必要があり、また、工事によっては複数のシステムや部門が関わるため、自分の担当領域は把握できても、接続先や協力会社の進捗までは見えず、スケジュールの認識違いが生じることもありました。特に地震などの災害発生時、工事停止による影響範囲を把握しようとしても、複数のExcelファイルを個別に確認して回る必要があり、非常に労力がかかっていました。
さらに、通信方式(3G・4G・5Gなど)の異なる工事が同時並行で進む中、工事の種類や期間がそれぞれ異なり、Excelでの管理は世代ごとに個別最適化されていました。加えて、ベテラン層の増加によって業務が暗黙知に依存し、属人化が進んでいたことも、技術継承の観点から大きな課題となっていました。
こうした状況を変えるべく、同社は一気通貫で状況を把握できるシステムの導入検討を始めました。比較検討の結果Salesforceを選んだ理由として、業務上のつながりが深い社内の別組織が既にSalesforceを利用しており、基盤を共有でき、連携しやすい点、直感的で分かりやすいUI、そして1つのライセンスで多様な用途に展開できる拡張性の高さなどが挙げられます。
CD-BPMについて
CD-BPMは、コアネットワークデザイン部が担う工事の工程進捗と、それに紐づく事業計画(予算)を一元的に管理するためのツールです。利用者はコアネットワークデザイン部のメンバーだけでなく、機能分担会社や実際に工事を担う協力会社まで含め、現在約600〜700名にのぼります。
現場で特に評判が良いのは、工程可視化機能です。工程全体が俯瞰的に見えるようになり、状況が把握しやすくなったという声を頂いています。また事業計画やレポート機能も好評です。あらかじめレポートを作成しておけば、データを入力するだけで自動的に最新の集計結果が反映されるため、これまでExcelの数式や参照セルのミスを一つひとつ確認していた手間が大幅に削減されました。また、Slack連携も好評です。Slack上でSlack Botに工事情報について問い合わせると、CD-BPM側のデータを引き出せる仕組みで、日常的にSlackを活用する現場との相性がよく、想定以上に活用が広がっています。

Salesforce、フレクトを選んだ理由
Salesforceの採用を決めた背景には、検討段階でプロトタイプを示され、標準機能の組み合わせだけで「ここまで実現できるのか」と実感できたことがあります。既存の拡張機能を用いてガントチャートなどのイメージをその場で提示してもらえたことで、「自分たちの業務にも落とし込めそうだ」という具体的な手触りを持てたことが、大きな決め手になりました。
フレクトへの依頼を決めた理由としては、まずSalesforce社からの紹介であったこと、そして有資格者の多さから技術力への安心感があったことが挙げられます。さらに、提案時にプロジェクトの進め方を図示し、「まず標準機能で導入し、段階的に拡張していく」という Fit to Standard (まず製品の標準機能に業務側を合わせること)の考え方を示してもらえたことが印象的でした。多くの提案が「どう実現するか」に終始する中、「どう進めればうまくいくか」まで踏み込んだ提案をしてくれたのはフレクトだけでした。
「しっかりサポートしてほしい」「オンサイト対応をしてほしい」という要望に対しても、導入当初は週3回・1回2時間の定例を実施し、内容をすべてコミュニケーションツールに記録した上で、課題や次のアクションを継続的に管理してもらえました。要望の実現が難しい場面でも、予算ありきで済ませず、できる範囲で最大限の提案をしてくれた点を高く評価しています。結果として、3ヶ月ほどで最初のリリースを迎え、当初の想定より早いペースで社内展開が進みました。
導入後の効果
CD-BPMの導入によって、工程全体を俯瞰的に把握でき、担当者や関係者も把握しやすくなり、部門を跨いだ横断的な進捗確認ができるようになりました。また事業計画の集計業務が大きく効率化されました。以前はExcelの数式や参照ミスを都度チェックする必要がありましたが、現在はデータを入力すれば自動的に正しい集計結果が得られる状態になり、「この数字は合っている」という安心感が生まれました。
また、特に大きな効果として挙げられるのは、業務そのものの変化以上に、現場の意識や組織風土の変化です。導入当初は反発もありましたが、次第に「まずCD-BPMを起点に次のプロセスを考えてみよう」「このデータを使えばうまくいくのでは」という発言が現場から自然に出るようになりました。また、コアネットワークデザイン部の取り組みは、ネットワーク部門全体の社内会議で共有し、他部門でもSalesforce導入の動きが広がるなど、コアネットワークデザイン部が社内DXの先駆けとしての役割を果たす結果にもつながっています。
2025年5月には、CD-BPMの利用者向けにデモ体験会も開催され、約200名が参加しました。これは対象ユーザーの約3分の2に相当する規模で、具体的な質問や活用要望が多数寄せられるなど、好意的な反応が得られました。

ドコモとしてのDXへの思い
同社では、CD-BPMの導入をゴールではなく、むしろスタート地点として捉えています。データを蓄積すること自体はもはや当たり前であり、その先でAIを活用しながらデータを資産として使いこなし、次世代の業務改革につなげるという考えです。具体的には、蓄積されたデータを分析することで、どの工程に負荷が偏っているか、どこに無駄なプロセスが発生しているかを見つけ出し、改善を実行していくことを見据えています。
その一例として、技術支援業務の領域ではAI活用の検討が進められています。協力会社から工事に関する問い合わせがあった際、これまでは担当者が確認して回答するまでにタイムラグが生じ、それがそのまま工事の遅延につながることもありました。今後は、過去の問い合わせデータをAIで分析し、まずAIが一次回答を行い、それでも解決しない場合には担当者にエスカレーションする、という仕組みを検討しています。
本取り組みには、自社の生産性向上や効率化にとどまらず、協力会社をはじめとするパートナー企業の効率化にも寄与し、共に業界全体をより働きやすいものにしていきたいという思いがあり、パートナー企業の立場も考えた取り組みを全社的に進めていきたいと考えています。
また、本取り組みを通してネットワーク構築プロセスを最適化することで、よりスピーディーに高品質なサービスをお客様へ提供できる体制づくりを進めています。通信は、日々の暮らしやビジネスを支える重要な社会インフラです。だからこそ、業務効率化やデータ活用によってネットワークの構築・改善を加速し、お客様に安心で快適な通信を届け続けることが、ドコモとしてのDXの本質だと考えています。
プロジェクトの成功要因
プロジェクトが順調に進んだ最大の要因として、「ソフトランディングができたこと」が挙げられています。SaaS導入にあたっては、Fit to Standardの考え方の下、既存の業務フローを大きく変える必要がある場面も想定されていましたが、CD-BPMを構築する過程で、Salesforceを従来の業務フローに寄せることができた部分もあり、従来の非効率な業務フローの見直しとSaaS導入による管理データの粒度の統一、業務フローの標準化との間で、ちょうどよい落としどころを見つけられたことが、スムーズな導入につながりました。
また、SaaS製品の導入にあたって「業務の標準化」がなければうまくいかないという考えを、プロジェクトの初期段階からメンバーに説明してきたことも大きかったと考えています。Fit to Standardの考え方を早期に共有し、要望を全て盛り込むのではなくまず標準機能で運用してみるという進め方を徹底した結果、拠点間でバラバラだった業務フローを統一できました。加えて、アジャイル型の開発によって短期間でプロトタイプをユーザーに提示することで、現場の気運や当事者意識が高まったことも成功の大きな要因です。

今後の展望、フレクトへの期待
今後については、これまで蓄積してきたデータを活用したデータドリブンな意思決定の実現が、大きなテーマとして挙げられます。年間数千件規模の工事データを活用できる基盤が整ったため、今後は他システムとのデータ連携やAI活用を通じて、業務プロセスのボトルネックの発見や改善提案の支援までを自動化していきたいという構想があります。単なる業務基盤としてだけでなく、事業計画(予算)の情報も扱っていることから、将来的には経営基盤に近いレベルまで発展させていきたいという展望があります。
フレクトには、AI活用やMuleSoftを含めた他システム連携への技術的な支援に加え、コード量を抑えたスピーディーな機能拡張、そして業界の最新動向や知見の共有など、継続的な協力を期待しています。将来的なCD-BPMの内製開発も目指したいと考えており、実務レベルでスキルアップできるような支援を、今後も続けていただけると嬉しいです。
これからDXに取り組もうとしている企業に向けて
何をすればいいか分からないところからのスタートでしたが、話してみることで自分たちが本当にやりたいことが見えてきました。悩んでいる時間がもったいないため、まずは一歩踏み出して相談してみることを勧めたいです。世の中は思っている以上に進んでおり、多様な製品が市場に提供されていることから、想定より少ないコストで実現できる可能性も高いと考えています。業務の標準化やプロセス改革に悩む企業は、まずは相談することで適切なアドバイスを得られるはずです。

株式会社N T Tドコモ
ネットワーク本部 コアネットワークデザイン部 コアデザイン推進担当
担当課長 笠井 正博様
主査 杉本 拓朗様
熊木 智大様
株式会社フレクト
クラウドインテグレーション事業部 小引 将矢、中島 尚吾



