株式会社NANKAI様
Auth0による認証基盤刷新を支援〜NANKAIグループのサービスをつなぐ「One ID」を実現〜


Introduction
1885年の創業以来、鉄道事業を基軸に関西の交通ネットワークを支えてきたNANKAIグループは、今では都心・沿線郊外の開発から商業・物流施設の運営まで、多様な事業を展開しています。2026年4月1日には、鉄道事業の分社化に伴い旧・南海電気鉄道株式会社から株式会社NANKAIへと商号を変更(鉄道事業は新・南海電気鉄道株式会社が承継)。グループ経営の新たなステージへと進みました。
お客さまに対する提供価値の拡大に向け、中核になるのがグループ共通IDである「minapita ID」です。NANKAIはminapita IDによるOne ID構想をさらに推し進めるため、フレクトとともにAuth0を用いて既存の認証基盤を刷新しました。4月1日、グループの新たなスタートと時を同じくして本番稼働した新しい認証基盤。その舞台裏を紹介します。
インタビュー実施:2026年6月
お話を伺った方

株式会社NANKAI
データマーケティング部 課長
赤迫 ゆり様(写真中)
データマーケティング部 主任
竹位 昇一郎様(写真右)
南海システムソリューションズ株式会社
情報サービス部 シニアエンジニア 兼 マネージャー
木島 彩様(写真左)
プロジェクトの背景・課題
minapita IDは、NANKAIグループの各種サービスを共通のIDで利用できるアカウントサービスです。鉄道、商業施設など、さまざまなサービスを1つのIDでつなぎ、一人ひとりのお客さまに最適なサービスを提供し、継続的な関係を築くことを目指しています。
この構想は2022年ごろに着手し、前身となる認証基盤は2023年4月にRed Hat Single Sign-On(オープンソースソフトウェアであるKeycloakの商用サポート版)を用いて構築、同年11月にサービスを開始しました。初期段階ではIDとパスワードによるシンプルなログイン機能を低コストで実現でき、ユーザー数に応じたライセンス費用が発生しない点もメリットでした。
一方で、サービス拡張に伴い、課題も明らかになりました。会員登録の簡略化に向けたソーシャルログインへの対応や、関西国際空港につながる路線を持つという当社ならではの事業特性からインバウンド顧客向けサービス展開などを進めるには、自前のカスタマイズが必要となり、開発・運用コストが高くなるという懸念がありました。また、Keycloakに精通したエンジニアやベンダーが限られること、バージョンアップ対応にも想定以上の工数・費用がかかることが分かり、将来的な運用リスクも課題となっていました。
こうした中、2026年4月1日のデジタルきっぷサービスのリニューアルを契機に、認証基盤についても中長期的な視点で2024年秋ごろから製品比較を開始しました。

Auth0の選定プロセス
製品選定は6か月ほどかけて実施しました。Auth0やそれ以外のIDaaSも含め、複数のサービスを比較しました。比較軸は「機能」「運用を含めた5年間のトータルコスト」「MAU(Monthly Active Users、1か月当たりのアクティブユーザー数)パターン別のライセンス費用シミュレーション」などです。機能面については「移行した既存ユーザーがパスワードリセットなしにログインできること」「ユーザーが自分のアカウント情報を確認、変更できるマイページ機能を構築できること」「ソーシャルログインを導入しやすいこと」といった具合に細かく見ていきました。
最後まで候補に残ったのが、Auth0、スタートアップ系のIDaaS、そしてKeycloak改修の3つでした。当初はスタートアップ系IDaaSのライセンス費用が安価に見えていましたが、実現したい機能を詳細に検討していくと、別途開発が必要となりコストが積み上がっていきました。Auth0は複数のベンダーから提案され、メジャーでベンダー側に知見が多いという印象を受けました。また、鉄道業界のネットワークを活用し、実際にAuth0を導入している同業他社へのヒアリングも実施しました。
最終的に、初期費用に加え、ライフサイクルコスト、運用負荷、サービス拡張への対応力を総合的に比較・評価し、最適な認証基盤を選定しました。必要な要件を満たしたうえで、トータルコストに優位性があり、他社での導入実績も確認できたことが、Auth0を選定した決め手となりました。

フレクトを選んだ理由
複数のベンダーに提案依頼を行った中で、最初の提案から具体的なシステム構成案を提示したのがフレクトでした。データベースの配置場所だったりKeycloakとの比較ポイントの明示だったり、他社にはない具体性が評価されました。それ以上に印象的だったのは、コミュニケーションのスタンスです。こちらの意図を汲み取って課題を捉えて提案に落とし込んでくれる、こちらから聞かなくても先回りして情報を出してくれるという印象を受けました。
実際のプロジェクトでもその姿勢は変わりませんでした。要件定義の段階でAuth0でできること・できないことを早期に整理してアウトプットしてもらえたため、設計以降の工程がスムーズに進行しました。課題が発生するたびに調査結果と対応案をセットで詳細に示してくれる点にも気遣いを感じました。複数の関連システムの構築を同時並行で進めなければいけない大変さがありましたが、安心して進めることができました。
フレクト側の中心メンバーだった菊池さんには南海システムソリューションズ側の要員としても稼働してもらい、他のベンダーなら回答まで1週間かかる技術的な問い合わせが数時間で解決でき、開発スピードが大幅に向上しました。4月1日の本番リリースでも大きなトラブルはなく、安定稼働を達成しています。

導入の成果と今後の展望
最大の成果は、NANKAIグループ内の複数サービスを一つのIDでつなぐ基盤を整備し、鉄道事業も含めた共通ID化を実現できたことです。これまでも当社グループ共通ポイントサービスであるminapitaポイントを中心にID活用を進めてきましたが、今回の認証基盤刷新により、接続サービスを拡大し、グループ横断で顧客接点をつなぐ土台を整えることができました。
鉄道や商業施設など複数の顧客接点における行動データを横断的に把握・分析することが可能になったことで、どんな方がどんな場面で当社サービスを使ってくださっているかが見えてきます。これらのデータを生かして、よりよい顧客体験の実現につなげていきたいと考えています。
また、今後はログインステップの簡略化、連携サービスのさらなる拡大にも取り組んでいきます。フレクトには認証基盤の活用はもちろん、データ活用も含めてトータルでの支援を期待しています。

<インタビュー>
株式会社NANKAI
赤迫 ゆり様、竹位 昇一郎様
南海システムソリューションズ株式会社
木島 彩様
株式会社フレクト
Identity & AI事業部 広瀬 彰太郎、菊池 啓介



